Life Place

心を満たす場所

北欧デンマーク編 Episode 3

チナ・ヘンセンさんのLife Place、訪ねました

「心を満たす居場所」を、

グリニッチでは「Life Place」と呼んでいます。

心を満たす居場所は人それぞれ、違うもの。

すてきなあの人は、いったいどのようにして、

居場所を作っているのでしょうか?

今回訪ねたのは、北欧デンマークで暮らすヒュッゲナーの

「Life Place」。

居心地が良く、心を満たす空間づくりのヒントをたくさん、いただきます。


自己紹介をお願いいたします。

コペンハーゲン市が運営する「Villa Rose」という保育園と幼稚園の代表を15年前からしています。また、他の保育園幼稚園に出向いて指導やアドバイスをすることもあります。21歳の娘と26歳の息子がいて、今は娘とふたり暮らし。息子は独立して同じコペンハーゲン市内に住んでいます。Instagram(@tina.cph)にインテリアや家具の写真を投稿して、色々な方と交流するのを楽しんでいます。

ご自宅の好きなところについて教えて下さい。

1893年に建てられた古いアパートに25年前から住んでいます。歴史がある建物は、魂(ソウル)が宿っているように感じられるので好きです。ここは、もともと高級アパートとして建てられたもので、当時はお金持ちの商人たちが暮らしていました。コペンハーゲンにはまだこういったアパートが残っています。その時代の上質なマテリアルや高い天井、両開きの扉。新築では見られないこのようなディテールが随所にありますし、大勢のゲストを招くことができる十分なスペースがあるところが気に入っています。

部屋作りで大事にしていることや、こだわりがあれば教えてください

私は若い頃からずっと家具が大好きでした。お金を貯めては好きな家具を少しずつ購入し、集めてきました。基本的に家具は一生物と考えていますので、一度買ったものは手放しません。もちろんインテリア用品や雑貨は買い替えたりしますが、家具は大切に長く使います。好みの家具はデンマークのクラシックデザイン。家具は使うものですので、使っていくうちに擦れたり古くなったりするのは当たり前のこと。それが魅力となっていくと考えています。流行っているから、見た目が綺麗だから、という理由で買い物はしません。機能性が優れていたり、私のテイストに合っていたりするものだけを揃えていこうと思っています。我が家はオーク材の家具が中心なのですが、オーク材は色がニュートラルなので、カラフルのものと合わせてやすいのも気に入っているポイントです。家具以外には、陶器にも興味があります。素敵な陶器を見つけるとついつい衝動買いをしそうになりますが、基本的にはひとつ新しいもの買ったら、今持っているものをひとつサヨナラするというようにしています。買い物に関しては慎重派ですね。ヒュッゲを感じられる空間にゲストを招きたいので、小さなランプをたくさん置いたり、キャンドルを灯したり、一年中お花を飾ったりしています。生花は彩りを加えてくれるだけでなく、見ているだけで私がハッピーな気持ちになるので置きたいと思っています。

家での食事についてお聞かせください。

娘とふたり暮らしなのですが、食事はいたってシンプルですね。あまり手の込んだ料理は作りません。それよりもひとつひとつの食材にこだわるようにしています。美味しいパンとチーズ、ソーセージという感じです。来客時も同じです。娘とふたりだけの夕食などは、チキンをオーブンで焼いてサラダを作るだけ、というようなシンプルな料理ですが、とても美味しいです。冷凍食品や加工食品はあまり買わないようにしています。デンマークは無農薬や無添加が世界一普及している国なので、エコロジーマークがついた食材だけを買うようにしていますが、料理そのものはごく簡単なもの。

家のなかにお気に入りのスポットはありますか?

誰と一緒に過ごすかによって、お気に入りの場所は変わってくるかもしれません。ゲストを招いたときはダイニングテーブルの周りが一番のお気に入りです。ダイニングルームはバルコニーへ続く扉があるので、夏の間や天気のいい日は扉を全開にして外の空気を感じながら食卓を囲めるんです。また、食後は、ダイニングテーブルの近くに置いてある長椅子へ移動することもできます。小さなグループに分かれておしゃべりを楽しめるのです。少し離れたところに座っていても同じ部屋にいるので、一体感は味わえます。ダイニングルームには天井からの照明はないのですが、小さなランプをたくさん配置して、部屋を明るくしています。21歳の娘とふたりだけで過ごす場合は、リビングルームでテレビ見たりして親子の時間を楽しんでいます。ですから、お気に入りのスポットは状況によって変わりますね。

どこからインスピレーションを得ていますか?

以前は家具やインテリアに関する雑誌が好きでしたが、近年はインターネットがインスピレーションの源となっています。特にInstagramをよく見ています。他の人のインテリアやアイデアを見て、ハッシュタグなどでブランドを確認しオンラインストアへ飛んだり。そして最終的に実店舗の情報へつながるというような感じです。Instagramを見ていると、我が家とはまったく異なるカラフルなインテリアを見ることができるので、特に世代も若い人のアカウントから刺激やアイデアをもらっています。あとはコペンハーゲンには数々のデザインストアがありますが、私が好きなのはPaustian。ときどきお店を覗いては、商品をチェックしたりしています。

暮らしにヒュッゲを取り入れるためのアドバイスをお願いします。

ヒュッゲというのは、時間をかけて自分の好きなものを大切にして行くことで生まれると思っています。ですから、自分の住んでいるところをより心地よくしたい、という気持ちを持つことからヒュッゲは始まるのではないでしょうか。ショップで見たインテリアを自宅で再現するだけでは、全然ヒュッゲではないです。多くの人がヒュッゲな空間を作るために花やキャンドル、クッションなどを部屋に置きますよね。これは誰もができることです。でも、それはあなたの好みに合っているでしょうか? ご自身の気持ちに正直になって、心から良いと思うものだけを置くのが大事なポイントです。

もうひとつは、家具を使い込むことでヒュッゲな雰囲気が生まれると思います。たとえばオーク材の天板は、生活のなかでどうしても輪染みやいろんな跡がついてきます。でも、それを味わいとして楽しめるようになることが大切。そういう部屋のほうがお客様もリラックスできます。触れることを躊躇するほどピカピカな家具はヒュッゲじゃないです。

あとは細かいことですが、うちは部屋が広いので静かになりすぎないように、つねに何か音楽をかけるようにしています。音楽もヒュッゲの要素だと思っています。ジャズでもポップスでも何でもいいです。もちろん会話をしている時はボリュームを下げますが、BGMがあるのはすごくヒュッゲなんじゃないですかね。

お客様が来た時にどうしたらくつろいでもらえるだろう? と考えることで、自然とヒュッゲな空間になっていくと思います。このクッションは座り心地がいいかな? 花をどこに飾ろう? キャンドルをどこに灯そう? と想像することで楽しくなりますね。柔らかいクッションは「ここへお座りください」、美しいキャンドルの灯りは「このコーナーでくつろいでください」というゲストへの合図になります。

また、娘とふたりきりで家にいるときは、できるだけ使っていない部屋の照明もつけるようにしています。誰もいない部屋に照明をつけるなんてエコじゃないと思われそうですが……省エネ電球を使って、できるだけエネルギーの負担にはならないように小さな灯りをつけています。誰もいない部屋にぼんやりと灯りがついているのは、温かみがあってヒュッゲの要素のひとつだと考えています。

最近はミニマリズムというか、シンプルなインテリアがデンマークで流行っているのですが、シンプルになりすぎて、住人の個性がなくなってしまったように感じます。そぎ落としすぎるとヒュッゲじゃなくなってしまうと思うのです。


照明を選ぶ時のポイントはありますか?

レクリントやルイス・ポールセンなど、タイムレスな魅力があるデザインが気に入っています。また、アンティークやヴィンテージショップでノーブランドのランプを買って、自分でランプシェードを付け替えたりもします。照明を選ぶときには、空間全体を想像して、どこに置いてどういう効果を得たいかをシミュレーションするようにしています。スポットライトは一切使いません。その理由は、光がビームのように強く当たるのが好きではないから。照明のバランスは、そのときどきで自分で調整します。小さいランプをひとつだけつけて、あとはキャンドルにする日もあれば、いくつもライトをつける日もある。自分でバランスを考えるのが楽しいので、スポット照明のような、光の場所が特定されているライトは好みではありません。また、ランプはとても素敵な影を描くので、照明という機能性だけではなく、灯りとその周りにできる影も含めて楽しんでいます。

先ほどもお話しましたが、誰もいない部屋にも少しだけ照明を灯すように意識しています。あまりエコではないんですけども、できるだけ省エネに気をつけながら。自分が他の部屋へ行く時や、お客様がトイレに立つ時に、ほのかな灯りが目に入るのがヒュッゲだと思うのです。自分がいる場所以外の部屋のことも、気にかけようにしています。


素材へのこだわりについてお聞かせください。

まずひとつは、見た目の良さ。たとえばオーク材の場合は、オーク特有の重厚感に惹かれますね。私がデンマークのクラシックなデザインの家具を買うのは、高級品だから買うのではなく、職人のこだわりなど、その家具が持つストーリーに敬意を払っているから。欲しい物があるときは、お金を貯めて買います。リーズナブルな代用品で済ませようとは考えません。むしろ、「一番欲しいものが手に入らないなら、何も買わないほうがいい」と考えるのが私の性格なのです。食材でもなんでも、妥協はしたくないのです。特に、オーク材の家具はラッカーやオイルをできるだけ塗っていない、ナチュラルな加工のものを選んでいます。無垢の木の表面の温かみと柔らかさが大好きなので、木が生きている感じを楽しみたいのです。床材も同様に、できるだけ加工されていないものを選んでいます。メンテナンスは大変ですが。

上質で長持ちする家具を使うと、いろんな思い出や体験が生まれると思っています。たとえば、子どもたちが小さい頃からずっと同じ家具を使いながら育つと、家具も家族の一員のような大切な存在になるのです。娘と息子も、家具に対する想いは受け継いでいると思います。それぞれの家具がいつどこで買ったものかなど、家具が持つストーリーをうちの子どもたちはよく知っています。思い出もたくさん詰まっています。子どもたちと一緒に家具も年を重ねたという感じですね。


ひとつだけ選ぶなら、どの家具が一番のお気に入りですか?

2脚持っているウェグナーのCH25です。私にとって若い頃からの憧れの椅子でした。10年ほど前に購入してからは、毎日使っています。

最後に、チナさん流の子育ての秘訣は何でしょうか?

インテリアにも同じ考え方が当てはまりますが、子育てもできるだけシンプルに考えるのが大事だと思います。他の人の意見に左右されずに、自分の考えをしっかりと持つ。もちろん本からアドバイスを得られることはありますが、本に書かれていることにとらわれ過ぎずに、自分の目でお子さんの状態をちゃんと確認する。たとえば眠たそうにしていたら、いつもよりも早く寝かせるとか。また、お母さんたちは自分自身に優しくすることも忘れずに。今日は面倒だから昼ごはんをソファで食べちゃおう、とかそういう日があってもOKですよね。自分に優しくしながら、自分がいいと思うことを確かめながら子育てをしていく。それが良いのではないでしょうか。