Life Place

心を満たす場所

北欧デンマーク編 Episode 1

トーマス・ビルさんのLife Place、訪ねました

「心を満たす居場所」を、

グリニッチでは「Life Place」と呼んでいます。

心を満たす居場所は人それぞれ、違うもの。

すてきなあの人は、いったいどのようにして、

居場所を作っているのでしょうか?

今回訪ねたのは、北欧デンマークで暮らすヒュッゲナーの

「Life Place」。

居心地が良く、心を満たす空間づくりのヒントをたくさん、いただきます。


自己紹介をお願いできますか?

北ユトランド出身で、18年前にコペンハーゲン移住。現在シングルでアパートに一人暮らし。Novo Nordisk Fondenという財団でグラフィックデザイナーとして勤めています。 Webデザイン、ビジュアルアイデンティティ、印刷媒体など、グラフィックに関する仕事を幅広く手掛けています。以前はフリーランスのフォトグラファーとして5年間活動もしていました。日本には過去に2回訪れたことがありますが、また行きたいといつも思っています。

最近は家の中で何をする時間が増えましたか?

コロナの影響で、家で仕事をするという時間が大幅に増えました。以前からフレックスタイムで必要性があれば、家で働ける職場環境ではありました。でも、やはり強制的にもっと自粛しなければいけないということで、家で働く時間が増えたので、日常生活に大きな変化を感じています。かなりコンパクトなアパートのため、オフィススペースまでは設けられません。そこで今まで食事用だった大きなダイニングテーブルを作業テーブルとしても使っているのですが、ここで仕事をするのに慣れるまでに時間がかかりました。今、所属している職場はすごく大きなオープンオフィスで、たくさんの人が同じ空間にいるという環境に慣れていたので、リモートワークっていうのはすごくそれに比べると大きな差があるため、最初のうちは戸惑いました。

ご自宅の好きな所や

気に入っているポイントを教えてください。

自分の住まいについて自慢するようで答えるのが難しいけど、一つ言えるとしたら昔からの夢やアイディアが実現出来ている空間なので、その点は満足しています。

昔からの夢やアイデアが実現できているというのは、

具体的にはどういう意味でしょうか。

一年半前に現在の住まいに引っ越してきたのですが、それまで住んでいたアパートは、キッチンとダイニングが分かれていました。ちょっと余談ですが、私は友達と定期的にお料理を一緒にする「フードクラブ」というグループを作っていまして、これはいろんなお家へ行って、みんなでお料理してご飯を食べるっていうようなコミュニティです。前のアパートではどうしてもキッチンに立つ人は、その間は会話に混ざれなかったりっていうのが残念でした。次に引っ越す時は、キッチンがオープンで、全員で一緒に時間を過ごせる空間があるといいなと思い、このアパートにしました。

キッチンの照明がとてもユニークですね。

お気に入りの照明はありますか?

照明はすごく大事だと思います。機能性ももちろんですが、僕自身「ランプフェティッシュ」でして(笑)。見た目もかっこいいランプに惹かれます。特にフランスやデンマークの照明を好んで揃えています。後ろに写っている照明は、実は伝統的なデンマークのワーキングデスクランプで、作業テーブル用として売られているものなんです。本来はテーブルに取り付けて作業の手元を明るくするためのランプを、天井に逆さにつけてみました。すると、さすが作業用の照明なので、キッチンがすごく効果的に照らされて機能的だったんです。デンマークは日照時間が短いですし、人を家に招く習慣があります。人は光のまわりに集まるような習慣があると思うので、自然とそういうことを意識しているのかもしれません。もちろん、照明以外にキャンドルもよく使います。

例えばフランスの照明であれば、ジェルデとかセルジュムーユなど、
世界的に知名度の高いものもありますが、そういうモノにこだわりはありますか?
それよも使い方を工夫して光で遊んでいるのでしょうか?

ジェルデは作業用ランプなので、デザイナーランプっていうわけではなく、作業用に作られた定番ランプを何年か前に購入して、ベッドサイドランプとしてランプのグラを使っています。アイデアだけでなく、モノへのこだわりもありますね。照明に興味があるので沢山集めたわけではないですけど、ジェルデの場合は、見た目がちょっとアイコニックなので、アイテムとして置いときたいという感じで選んだんです。でも何年か経って、今では機能性も求めるようになったので、これから買うものは両方ですね(笑)。年を重ねるごとにこだわりがちょっと変わってきましたね。

家というものの存在をどう捉えていますか?

自分にとって家は、自分のパーソナリティを反映する場所であって欲しいと思っています。例えば、家の中のインテリアを褒めてもらうと、まるで自分の事を言ってもらっているような気もしますし、自信につながると思っています。私が生まれ育った家では両親がすごく綺麗に片付ける事を習慣にしていました。綺麗で見た目にも整った家というのは、その人の両親の影響や自分の性格が現れるんだっていうのを若いうちから意識していたと思います。それであれば、私のポジティブな一面が現れるようにして、人が来た時に自分の良いところを見てもらいたいっていう風に考えるようになりました。そこに住んでいる人の性格というのは、家に現れると思っているので、それを逆に活かして、自分を見てもらいたいと思っています。

DIYやIKEAハックがお得意のようですね。

オープンキッチンのシステムは、全部IKEA。天板だけオーダーメイドで作りました。予算の中でできるだけ自分のオリジナリティが出るようなキッチンを作ったり、小さな工夫を加えて、より自分の住んでいる空間に適したものを作るのが大好きです。お金の使い方としては、すごく細かなディテールだったり、最も効果的な部分を選んで、そこに力を入れるだけで結構格好良くなったり、オリジナリティが出ると思います。遊び感覚でやることで、いろんな発見をしたり、自分なりにも応用できないかなって思うことがすごく面白い。引っ越しは、新たなプロジェクトのきっかけという風に考えています。

居心地だけじゃなくて、

インスピレーションや刺激も求めているわけですね。

コペンハーゲンに約18年住んでいますが、これまでに計10回も引越ししています。新しい可能性が見える場所っていうの選んで引っ越しをしているので、いろいろ新しい発見とアイデアが湧いてきて、すぐ試したくなります。結果的に結構お金を使ってしまうんです。アイデアがいっぱい溢れてるのも問題ですね(笑)

家を選ぶ基準を二つ挙げるとしたら、何を選びますか?

実は今のアパートからも近いうちに引っ越す予定です。次は今よりも階数の高い5階の部屋。やはり、上層階は自然光がいっぱい入るので、陽当たりの良さは条件の一つですね。二つ目はただの四角い部屋だけではなくて、ちょっとエッジの効いたというか、ちょっと斜めの壁があるとか、個性的な物件。以前は外から見える庭も気にしていたんですが、今回は中に入ってサプライズがあるような部屋を選びました。隣に大きな公園があるので、5階のベランダに出て朝のコーヒーを飲むのを楽しみにしています。病気を患った経験から、本当に自分にとって大事なものについて考えた時に、美味しいコーヒーをゆっくり飲むことにこだわりたいと思うようになったんです。今後はそんな風に暮らしをちょっと大切にしてみたいと思っています。

最後に、暮らしをより良くする(ヒュッゲ)アイディアは?

いろんな色とマテリアルをミックスするのはおすすめです。既製品が並んだり、あまりにも統一感がありすぎたりするのは避けたほうが面白いと思っています。ヒュッゲな空間に仕上げるには、木材は温かみが出るのでインテリアによく使います。でも「ヒュッゲ」はとても主観的だと思うので、何をヒュッゲと感じるかは人それぞれ。個人的にはそこに住んでいる人の個性が反映されている住まいが、 "ヒュッゲリー"だと感じます。有名な雑誌のぺージをそっくりそのまま真似したような空間には、ヒュッゲを感じません。やはり「自分らしさ」が大切だと思っています。次にやってみたいDIYプロジェクトは、古いオーク材を使って壁を作るること。アメリカのドラマ『Mad Men』のような60〜70年代っぽい感じにしてみようかな(笑)。そこにちょっと珍しいランプとかを飾ってみたり。まだ妄想でしかないけど、結構いい感じになる予感がします。